日光浴の効果
アウトドアは自然を感じられる趣味の一つですよね。天気予報を見たり、てるてる坊主を作ったり。お日様との関係も深いです。具体的に日光に当たることは、どのような効果があると言われているのでしょうか。ビタミンDを中心とする知識は良く聞かれますが、そのほかの効果についても調べてみました。
日光浴は死亡率を低下させる?
2016年のスウェーデンの研究になります。
日光曝露を避ける女性と比較して日光浴など曝露習慣がある女性の死亡率は低いが、その反面皮膚癌リスクが高い。スウェーデンClintec Karolinska University HospitalのLindqvistらは、Melanoma in Southern Sweden(MISS)コホート女性の20年フォローアップ前向研究データの競合リスクシナリオ解析により、女性の日光曝露と死亡原因差を検討した(n=29,518)。日光曝露習慣の高い女性はそうでない女性より心血管疾患(CVD)、また非癌・非CVD死亡リスクが低く、これら女性においては生存率が増加した。したがって逆に相対的癌死亡率は増加した。日光曝露を避ける非喫煙女性の平均余命は最高日光曝露グループの喫煙者と等価で、日光を避けることは喫煙と同様の死亡リスク因子であることが示唆された。
Pelle G. Lindqvist:Avoidance of sun exposure as a risk factor for major causes of death,Journal of Internal Medicine,March,375-387,2016
喫煙と比較しているところがすごいですね。アジア圏では肌の色が違ったり、日差しも違うこと。また、男性での研究はされていませんがおそらく同じような結果になるのではないでしょうか。肌の色が濃ければ日光をさらに必要とすると言っている論文もありますね。
光治療としての効果
・光療法は、季節性うつ病に対する抗うつ作用と、生物リズムの相違を変化させる作用をもつ
亀井雄一:日光浴などの光照射による睡眠改善,薬局 62(10): 3371-3375, 2011.
・光治療は、季節性うつ病と概日リズム睡眠障害に対する第一選択の治療法である
・非季節性うつ病や不眠症、月経前症候群、神経性大食症、注意欠陥多動性障害、認知症、パーキンソン病にも対象が広がっている
・生物リズムが関与している病態に対して、考慮される治療法である
季節性うつ病においてセロトニントランスポーター機能が過剰になっており、光照射によって正常化されると報告された。冬期の日照時間の減少によって減少した脳内セロトニン機能が、光治療によって回復し抗うつ作用を示すことを支持している。
亀井雄一:日光浴などの光照射による睡眠改善,薬局 62(10): 3371-3375, 2011.
光はヒトの生体機能に対しても強い影響を与えることが明らかになってきており、季節性うつ病や睡眠障害の治療に応用され光治療として認知されるようになりました。光治療は通常2500~10000ルクスの高照度光を患者に照射しますが、晴天の屋外では50000~100000ルクス,曇天でも5000~20000ルクスの照度があり、屋外で過ごすことでも光治療が可能であるとされています。
全てのメンタルに影響するわけではないですが、対象が広がってきていることからさまざまな抑うつ症状に効果がありそうですね。今後の研究にも期待です。
日光浴しないことによる子の成長への影響
母子手帳の記載が、日光浴から外気浴に変更されたのが1998年で、その後年々紫外線対策が広まるとともに、ビタミンD欠乏症が増加している。今では乳幼児用の日焼け止めクリームや紫外線対策の商品が多く販売されているが、日焼け止めクリームはビタミンD生産を大きく低下させる。
北中幸子:検診で見つけるビタミン欠乏,小児科診療79(5)641-644, 2016.
日光浴の時間は、日焼けする量の数分の1程度で良く、季節・緯度などによりかなり異なるが、目安として関東地方では、夏期には朝夕に1日10-15分程度で過度に浴びる必要はない。しかし、冬季はほぼ日焼けすることがないことからわかるが、日中1時間以上必要で、通常の生活では不足する可能性がある。
クル病はよく聞く病気ですね。これはビタミンDで予防できる病気ですので、日光と栄養の関係は非常に大事です。たしかに、最近は日差しを気にして過度に予防している人を見ることも少なくありませんね。ただし、日光過敏症であったりその人の体質によっては当てはまらないこともあるので注意が必要です。
具体的に日光に当たる時間が示されているのはわかりやすいですね。冬は特に注意です。
生活リズムに大事なホルモン、メラトニンとの関係
日中5000ルックスの光環境で生活していたほうが、200ルックスで生活するよりも真夜中のメラトニン濃度が高くなる。5000ルックスの光は、室内で作ろうと思うと難しいが屋外に出れば曇りの日でもそれぐらいの照度は得られる。また、メラトニンには破骨細胞の活性を抑制する機能があることが報告され、骨粗しょう症の予防や治療薬としても期待されている。
服部淳彦:Geriatric Medicine(老年医学) 42(9):,1121-1126, 2004
メラトニンは濃度が高まることで生体リズムの同調作用は覚醒や睡眠のリズムを整えると言われています。また、自然光のほうが人工光よりも効果が高いといった報告もあります。
さいごに
いくつかの効果を参考にして改めてわかったことは、外に出るだけで効果があると言うこと。どうしてもテレワークなどで日中家にいることも少なくないと思います。しかし、当たり前のように日に当たる時間を確保することが健康につながります。たまにいっぱい日に浴びるのではなく、毎日の日課にしたいものですね。
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