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健康・医療登山

わかりやすく解説。安全な登山に必要な消費カロリー消費水分の考え方

健康・医療

登山に必要な消費カロリーと水分についてのまとめです。私自身がリハビリテーション医学専門のため、少し詳しく載せてみました。

大事なポイントまとめ

まとめ

・糖や水分が不足すると運動能力だけではなく、脳の働き(判断力や思考力)も低下する
・脱水により熱中症になりやすくなる
・1kcal消費するのに約1ml水分を消費する

・最低でも求められる消費量の7-8割が必要
・宿泊時は登山時と生活時のカロリー水分を計算する必要がある

・行動が3時間を超えるようなら電解質もしっかり考慮する
・必要なカロリー・水分を行動前から考えておきつつ、行動中も摂取する

山用
山用

安全な登山のためにも、この大切な知識を知っておきましょう!

カロリーと水分計算の根拠

アメリカ国立研究協議会では一般的な生活をする人の場合、1kcalのエネルギー消費について約1mlの脱水が起こるとしています。ですので、基本的にはカロリー消費と同じだけ水分量が必要になると考えます。
また、年齢と性別によって若干異なりますが一般的には覚えやすいように『1』で計算します。
もし、お子さんと一緒に登山するから子供の目安が知りたい、もっと詳細に計算したいという場合は下の表を参考にして求めた計算式に当てはめてみてください。

年齢男性(kcal/kg・時間)女性(kcal/kg・時間)
1-2歳2.542.49
3-5歳2.282.18
6-7歳1.851.75
8-9歳1.701.60
10-11歳1.561.45
12-14歳1.291.23
15-17歳1.131.05
18-29歳1.00.92
30-49歳0.980.90
50歳以上0.900.86
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会:エネルギー.日本人の食事摂取基準(2010年版),第一出版,東京.43-61,2009

カロリーと水分がもとめられる計算式

ここで考え方の基本になる計算式です。登山時の簡単な計算式、登山時の詳細な計算式、生活時の計算式をそれぞれ確認します。

それぞれの計算式

生活での計算

通常の生活で消費する計算式です。
体重kg × 生活時間h 

こちらは簡単な式ですね、例えば50kgの人が登山後に10時間睡眠するなら

50×10=500(kcal and ml) これを、宿泊時は通常の登山の消費に追加します。

一般的な計算

一般的な登山はハイキングの計算です。
(体重kg+ザックkg)×活動時間h×Mets×1.05
・25℃以上 ×1.4  最低推奨量:8割

例えば、体重50kgの人が10kgのザックを背負って、5時間の軽めの登山をするとなると

(50+10)×5×7(一般的な登山のMets)×1.05=2205になります。

ここから暑い日の場合は 2205×1.4=3087です。これが消費カロリー(kcal)と水分(ml)です。

さらに、最低となると8割になるので、3087×0.8=2469(kcal and ml)となります。

詳細な計算

YAMAPなどで使われている詳細な計算式です。
(体重kg+ザックkg)×(活動時間h×1.8+登り累積標高差km×10.0+下りの累計標高差km×0.6+距離×0.3 
・25℃以上 ×1.4  最低推奨量:8割

こっちは面倒なので、計算例は出しません・・・

山用
山用

自動計算できるページも作成しましたので、こちらも是非活用ください。登山前の準備でおすすめです!自分で使いたくて作成しました。

カロリー不足、水分不足の深刻な症状

糖と脂肪の関係

登山は有酸素運動ですので、基本的には糖と脂肪が使用されるのですが、脂肪は糖と一緒に燃焼されるという性質があります。脂肪は多く蓄えられているのですが、糖はごく少量ですので糖が枯渇した時点で脂肪エネルギーは使えずに疲労を招きます。
脂肪燃焼させたいから炭水化物を取らないで登山するというのは、大きな間違いということです。
※ここでは、わかりやすく 炭水化物=糖と考えてください。

糖が不足するとどうなるか

糖が不足すると、筋が動かなくなるだけでなく脳の働きも低下します。脳の働きには、筋肉を正常に動かすという機能がありますので、上手く動かなくなる、力が入りにくくなるなどの運動症状と、判断力や思考力が鈍る、注意力や記憶力が低下するなどの認知機能面の症状もでてきます。
こうなることで、滑落や遭難などの事故を起こしやすくします。

山用
山用

単にルートや道具だけの問題ではなく、このような基礎的な食事・水分という観点からも事故防止に努める必要がありますね。

行動食・水分の摂取タイミングは

単純な計算では、60kgの人が4時間吸水無しで行動すると、約2%の水分が失われて脱水になります。水分は基本的に最低1時間おきに摂取しましょう。また、行動が3時間を超える場合は塩分などの電解質にも注意をします。
行動食も同様ですが、最低2時間おきに摂取しましょう。
計算で出たカロリーが2000kcalだとしたら、行動前に500kcal・500ml程度の水分を摂取しておき計算に入れておくことも工夫の一つです。

いかがだったでしょうか。自分でもまとめてみて改めて行動時に気をつけなければと感じました。皆さんの安全登山の一助になれば幸いです。

参考文献

1)中原玲緒奈ほか:登111のエネルギー消費量推定式の作成:歩行時間,歩行距離.体屯,ザック重量との関係から.登山医学26:115-121,2006
2)山本正嘉:登山II寺のエネルギー・水分補給に関する「現実的」な指針の作成.登山医学32:36-44、2012
3)山本正嘉:登山における食事と給水,臨床スポーツ医学 34(3): 270-274, 2017.

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